MEETING RECORD — DETAIL
イラン大使訪問時の面談要旨
(2026年5月11日 イラン大使館訪問/詳細版)
*以下は、参加者が確認した要旨であり、いずれも発言内容は概略です。趣旨に関係ない細かな質疑は省略しています。
冒頭で、鳩山友紀夫元総理とセアダット大使との間で対話が行われました。鳩山元首相からは、最高指導者アリー・ハーメネイー師や関係の方々が亡くなられ。イラン人の尊い命が失われたことについて、深いお悔やみと哀悼の言葉が述べられました。そして、「私たちは、アメリカ・イスラエルの攻撃を国際的に違法と考えている。」と言われ、「今日は私たちの開始した声明・署名についてご報告申し上げる趣旨で来訪した」と説明されました。
大使からは、追悼への謝意の表明や、これまでの元総理との交流について温かい言葉があり、鳩山元総理からは、イランは核開発を行っていなかったという点について発言があり、現下の情勢に関する意見交換が行われました。
次いで、小林正弥千葉大教授からは、追悼の言葉を述べるとともに、「文化・学芸、そして公共哲学の立場から、日本とイランの歴史的友好関係の維持・発展を強く願っており、政治哲学の観点からは、アメリカの先制攻撃は国際法に違反するとともに倫理的に正義に反していると考えており、日本政府が国際法違反という判断を明言することを願っている。」という発言がありました。
そして大使に声明・署名の文章(日本語)を手渡して、趣旨の説明がなされました。その説明の要旨は、以下のようなものです。
「現在の中東情勢は、日本の生活やエネルギー安全保障にも直結する重大な問題であり、私たちは、日本政府がより主体的に平和友好外交を行うべきであるという立場から、政党や政府に要請するために、船舶通過のための友好的交渉を求める署名運動を開始いたしました。
この声明においては、大使とすでに話された島薗先生も呼びかけ人に加わっており、アメリカの一方的攻撃が倫理的な問題でもあると合意されたと伺っており、カトリックの教皇の発言や、道義や徳義という倫理的観点も文章に加えられています。
長年にわたる日本とイランの友好関係は、市民レベルにおいても大切に守られるべきものだと考えており、文明間・宗教間の対話を通じて平和的解決を目指し、今後、日本の宗教界・文化界・学術界にも働きかけて、日本社会におけるイランへの理解と友好感情の増進に努めてまいりたいと考えております。
その結果、数日で1万3000名を超える賛同が集まっています。これは日本においては短期間における急速な進展で、今後も増えていくと思います。日本社会の中には、対話や友好関係による解決を求める声が広がっていることを実感しております。そして、この声明や署名活動には、政治家に加えて、対話を求める研究者・経済関係者・実務家・宗教関係者などが連携しています。」
これに対して、大使からは、「緊急声明が長文で、多くの時間をかけて作成されたことと思う。署名の13000人は称賛に値する数字だ。」とされて、多くの分野の方々が様々の情報を基に念入りに作成されたものと理解されて、声明・署名活動に携わった方々への謝意が表明され、以前に鳩山会館で鳩山元総理とお会いしたことにも感謝の言葉が述べられました。
そして以下のような発言がありました。
「現在の状況は、非常に困難な状況である。不必要かつ完全に違法なこの状態を解決できる唯一の方法は、外交であり、外交による「予防」と「早期の収束」が必要である。私は、これまで、多国間や二国間の外交に携わってきた。「意見の対立がない」というのが理想だが、しばしばそれは幻想なので、対立は、国連憲章に基づいて、外交の部屋で解決されるべきである。今の対立も、外交によって、これ以上の流血は避けられるべきであり、対話によって、双方の一致点を見出すべきだ。それが外交の役割であり、真価である。実際に、今回の戦争が始まる前には、外交交渉が行われており、外交によって、被害の少ない、リスクの少ない道を選ぶべきだった。
しかし、トランプ政権は、外交の精神を理解していないので、その道以上の問題が発生している。外交の本質(お互いが歩み寄ること)が見過ごされている上、トランプ政権は、危険なイデオロギーによって行動しているように思える。ヘグセス国防長官にも、宗教的に狂信的なイデオロギーが見られ、「自分たちがすべてを得なければならない。」という危険な思想に立っている。
このような思想に基づく発想では、調整ができなくなり、混乱が生じる。神を根拠にした政策が行われており、そのためカトリックの教皇は、米国の言動に対して強い言葉で批判した。
今後の展開は、楽観視できない。昨日(5月10日)、イランが公表した回答に対し、トランプ大統領はTruth Socialで「全く受け入れられない」と投稿した。また、イランへの攻撃に関連する多くの投稿をしている[1]。大統領や閣僚などが、イランの崩壊を示唆・主張する発言も行っている。
上記のトランプ発言と同じ日(10日)に、ネタニヤフ首相はCBSのインタビューで「任務はまだ完了していない」と言った。このように、濃縮ウラン問題など、エネルギー関連の破壊や攻撃を示唆している。国連でも、対イラン非難の安保理決議案の動きがあり、自らの攻撃を正当化して、イランに対する制裁の権限を得ようとしている。
トランプ氏の北京訪問では習近平氏との会談があろうが、トランプ氏の投稿内容は頻繁に変化しており、楽観視できない。カタールやパキスタンなどが仲介してくれているが、戦争が再開されて世界経済が悪化する可能性もある。
いずれにしても、イランは、断固たる自衛の措置を緩めない。戦争の再開を望んでおらず、終結を望んでいるが、自衛措置はとる。
ホルムズ海峡を船舶が正常に通過できるようになるのは、戦争が収束してからにならざるを得ない。世界経済とエネルギー安全保障にとって大事なのは安定性と予測可能性だ。
イランは譲歩した提案を行ったが、米国は、自国の主張が100%認められないと満足しない。それは、イランが完全降伏することを意味するが、仮にイランが降伏しても、今度は、別の国がターゲットになる。このことは、UAEとバーレーンを除き、全ての中東諸国が理解している。イランにとっては、自衛権の行使が必要である。
今は、二つの道しか残っていない。第1は、全てのエネルギーがトランプ政権の圧力の下にある状況を正常化する道。第2は、トランプ、ネタニヤフが勝利して世界が混乱する道。
この緊急声明は、第1の道を示すものであると考えるが、第2の道は危険である。
現在の危機は、一瞬一瞬のタイミングで変化していく。」
- [1]トランプ大統領は、米軍の圧倒的な武力によってイランの航空機や高速ボートが撃破されているというAI画像を5月10日〜11日にかけてTruth Socialで投稿して、メディアや国際社会に大きな衝撃を与えた。このことを指しているのかもしれない。
鳩山元総理:
米中首脳会談の見通しは?
大使:
米中首脳会談が、今後延期されることはないだろう。トランプ氏は、北京の首脳会談の前に何らかの結論を得て、北京に行こうとするかもしれない。
中国は、トランプ氏が勝っているとは見ていないし、他の国もそれを知っている。トランプ氏は、外交的合意が成立してから北京に行けば、その成果を訴えることができる。
習近平氏は、トランプの要請があれば仲介に協力するであろうが、対価を求めることになろう。中国側は、ホルムズ海峡に関わる中国の権益確保など、自らの戦略を持っているはずである。
中国に関して配慮すべき点が2点ある。一つ目は、米国が戦闘に巻き込まれれば、巻き込まれるほど中国の利益につながるということ。二つ目は、中国はペルシャ湾において多くの国と良好な関係にあることである。
核開発に関しては、2015年に合意がなされており(包括的協働作業計画)、イランは合意を守ってきた。それを破ったのはトランプ政権側だ。
平岡秀夫元法相:
日本政府は、日本船舶のホルムズ海峡通過について、イラン政府と交渉した事実はあるか。
大使:
イラン政府と日本政府との間では、両国首脳間および外相間でそれぞれ電話会談が行われている。
その中で、日本側から、日本船舶のホルムズ海峡通過について援助を求める要請はあった。日本側は、「ホルムズ海峡は、国際海峡なので、あらゆる国の船舶の安全が確保される必要がある。」と主張し、これに対しては、イラン側は、公式的な立場を明確に伝えている。
多くの国が、イランに対して、同様の要請をしている。パキスタン、カタールに対して必要な便宜を図り、昨日も船舶が通過した。両国が行った仲介国としての努力に対して、両国には謝意も表している。
敵国を除き、事前に調整をするのであれば、船舶通行は可能である。しかし、せっかく調整しても、瞬時瞬時で情勢は変化するので、ここに困難な問題がある。米国が、軍事攻撃のフェイズに入ることもあるからだ。米国は、船舶に対して、逆封鎖しており、最近も「プロジェクト・フリーダム」という作戦(米軍による船舶の護衛・脱出作戦)もしようとした。だから、船舶通行のために調整しても、米国の軍事作戦で台無しになってしまう。
川内博史前衆院議員:
要請は、政府からでないとできないのか。民間からの要請でも受け入れることは可能なのか。
大使:
要請は、政府からのものでなければならない。すべての国がそうである。
もともと日本政府から総論として日本船舶の通過要請があったが、出光丸についてはイラン側の判断で通過が認められた(*)。それに関して、日章丸について謝意を表した。
川内:
イラン側からの制約は何かあるのか。
大使:
ホルムズ海峡の船舶通過に関しては、イラン側に、承認するかどうかという判断の権限がある。海洋法に関する国際連合条約では、海峡が平時であることが前提である。平時であれば、「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り」通行は無害とされており(第19条)、迅速な通過ができる。ところが、2月28日の開戦において、2つのことが起こった。一つは、米国がホルムズ海峡を通って沿岸国に武器を運んだが、これは法律(にいう無害通航)に違反している。もう一つは、ホルムズ海峡を戦場に変えたのは、米国とイスラエルである。
現在は戦争状態であり、イランは、国連憲章第51条に基づき、自衛権の行使ができる。イランは、戦時であるから、敵国の船舶の通過を妨げることができるが、敵国以外の国の船舶に対して、イランの配慮や統制に基き、適切な措置によって通過させることができる。停戦によって「平時」に戻るかと言えば、一時的なもので、戦争は続いているため、イラン側の自衛権の行使は担保されている。そこで、戦域であるため、船舶通過には政府間の調整が重要である。
今の状況は、例えて言えば、次のような状況だと言える。
「我が家が放火されたことに対して、「なぜ放火されたのか」という非難決議が行われようとしていて、逆に、放火された我が家に消防車が近づけるようにすることが阻止されている。」
*セアダット大使からは、この会見後に鳩山元総理に答礼があり、その際に、この点について、「出光丸通過については、セアダット大使から数回テヘランに要請した」という趣旨の追加的説明があった。
(*文責 平岡秀夫・小林正弥)
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